ガリッ

右頬に出来た細い筋がジリジリと痛みだす。
未だ威嚇の声を出し続けている彼の怒りが一体何処に向いているのか、如何して自分が飼い猫に牙を向けられたのか、考えようとしても彼の身体を抑える左手に食い込む爪の強さが思考を鈍らせた。(何て熱いんだろう。)
「マタムネ、」
『小生はもう二度と爪をたてたくないのです、ですから』

そんな貴方に、思慕の念を持つ者も居るのだという事を知って下さい、貴方は決して一人ではないのですから。小生の愛情は貴方の心同様にひねくれているのを、貴方だったらご存じのはずでしょうから。

こんな方法しか、
「『小生は知りません』、か。人間臭い猫だと思えば、はは、実際は鬼のようだね」
柔らかい背中を撫でると、マタムネは瞳を細めて笑った。




しい

 





「…いつまで経っても熱さが消えないじゃないか」
『ふふ、其れが小生のひにくれた愛情ですから』
「ははっ…」
――この傷がいつまでも残れば良いのになんて、なんて、無理な話、



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090115
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