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私
は優しく
手
折られた
海に、来ていた
明け方のその風景はとても穏やかで、静か
吹き抜ける風に髪を揺らしながら、ハオは小さく溜息をつく
初めて海を知ったのは、力を得てすぐのことだった
あの時から変わらず綺麗なまま
そう、見えるだけだけど
人間は大切な、こんなに綺麗なものを…壊していく
では何故
人間を壊してはいけない?
僕の質問に対する彼の返答はただ単純で小っちゃくて些細なものだった
「 」
その意味に気付いたのは、彼の全てが終わった時
「…っ!ハオっ!!!」
あの日、僕の元にたどり着いたのは彼だけだった
大方仲間は殺されたのだろう
「一足遅かったみたいだね、葉。僕は目覚めてしまった。もう、止められないよ」
「………オイラは、諦めん」
「ふふ、それは残念なことで…バイバイ、僕の半身」
僕は彼に炎を放った
彼はただそんな僕を、見つめているだけで動かない
意味がわからず首をかしげた
「なんだい………死にたいの?」
「死にたく、ねぇ…けど」
彼の心が、声が、同時に僕に響く
「………お前」
「………」
その時の彼の心はボロボロで、立っているのがやっとの状態だった
原因は…
「どうして、そんな………」
「………仲間だから。大切なもの、守りたいから。………お前と、同じだ」
「………!」
彼の仲間はただ殺されたわけではない
彼を庇って、死んだのだ
全てを託し人間を、大切なものを守ってくれる、ようにと
その想いに答える為に彼はここに来た
だけど………
「そんなに、苦しかったの」
「………こうなることも、あるって…理解、してた………はず、なのに………心だけは折れない…って…決めてた、のに」
「………」
彼は、僕の半身
最も近い存在でより深く感じられる
大切なもの
僕にとっては自然で、彼にとっては仲間で
失いたくない、その気持ちが形違えど同じものだと………
「…お前は、人間が好きなんだね」
「………っ」
「僕は、自然が好きだよ。共に、生きられる?僕の大切なもの…守れるかい?」
「………え…?」
彼の瞳にかすかな光が灯った
大切なものを奪われる気持ちはよく解っている
あの日の僕も彼と同じように、喪失感に捕らわれ何も出来なくなったから
今の彼はあの日の僕だった
「ただお互いに、大切なものを守りたくて戦う…その繰り返しはもう…うんざりなんだ。特に心が…見えてしまう僕にはね」
「ハオ………」
「乙破千代もやってくれたものだ」
僕は、僕にとっての「人間」になりたくなかっただけかもしれない
ただ彼の………
大切なものを奪ってはいけない、と
「ハオー!」
振り返るとそこには彼の姿
「朝早くにどうしたんだい」
「あぁ、散歩にきたらお前を見つけたんよ」
「そう………」
そして今、ここに居る
彼の笑顔を見ると僅かな後悔が宙に舞った
今はまだこれでいい
自然は壊され続けているけれど
「ホロホロ達が来とるんよ。お前も遊びに来ないか?」
「謹んで御遠慮させてもらおうかな」
新しく、大切にしたいものができてしまったから
どちらも僕で
どちらも大切なもの
Photo by
戦場に猫